4月16日に早稲田大学にて開催された社会人向け講座にて当該役員が講師として登壇した際に、問題となった発言を繰り返していたことがSNSを通じて知れ渡るようになり、18日にはマスコミの多くが報じています。
受講生からのクレームを受けて大学および講師本人から受講生に対する謝罪が開催日当日中に行われたとのことですが、騒動が大きくなったため18日には早稲田大学および吉野家がそれぞれ対外的に謝罪文を発信しています。
同じく18日には吉野家は臨時取締役会にて当該役員(吉野家常務取締役・吉野家HD執行役員)の解任を決議し、翌19日に公表しています。
不適切発言を受けて吉野家の株価は一時大きく下落しましたが、解任発表を受けて持ち直しました。
解任に至るまでのスピードが速く、吉野家の経営陣は今回の事態を非常に重く受け止めており、事態収拾のためには迅速な対応が不可欠と考えたことが伺えます。
解任という処分の重さについては、筆者としてはやや意外感がありました。ESGを真剣に考えるならば解任も視野に入れて処分を検討すべきとは考えていましたが、そこまでの覚悟はないだろうとも思っていたので吉野家経営陣のことを少々見くびっていたようです。
今回の不適切発言はSNSが発達しているおかげで外部に知れ渡ることになりましたが、おそらくは社内でも同様の言動を繰り返していたのではないでしょうか。その前提で考えるならば、この種の言動を不快に感じていた人たちが少なからずいたはずですが、マーケティングのプロとして外部から会社が招聘した役員ですから、表立って文句が言えずに黙認されていたものと推測されます。
しかし、これだけ問題が公になると、5月の定時株主総会が荒れることは必至です。もともと不快に感じていた役員ならば当該役員を排除する方向に容易に傾くでしょうし、そこまでの不快さを感じていなかった役員でも同じ穴の狢と見なされるリスクがあるのでやはり一線を画したいところでしょう。株主から責任追及される可能性を考慮し、ESGに真剣に取り組んでいる姿勢を明確に見せるためにも解任という結論に至ったのかもしれません。
本件は一個人の問題なのか企業風土の問題なのかは不明ですが、いずれにしろ社内外に対して吉野家ではこのような言動は今後許されないという経営陣の強い姿勢を示したことになります。強いメッセージを含む対応を迅速に行ったことは評価されていいと思います。
不適切発言が役員解任に至ったことでESGに取り組む企業として導かれる教訓は、
・不適切な言動を繰り返す相手が役員であっても黙認してはいけない
さらには、企業としてはこのような事態をそもそも回避したいわけですから、
・不適切な言動を繰り返すような役員を選任してはいけない
ということです。
企業やその役員に高度な倫理が求められるようになった現在の時代環境では、こういった対応ができていないことによるリスクが一昔前と較べてはるかに大きくなっています。
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