オーナー企業にガバナンスを求めることは可能なのか

2023-10-05

ガバナンス

 日本取締役協会(以下、協会)がジャニーズ事務所の問題を受けてガバナンス強化を求める緊急声明をリリースしました。

日本取締役協会 緊急声明

 他の専門家も本問題においてはガバナンスの欠如を指摘しており、元社長による重大な人権侵害を許しただけでなく、その隠蔽も図ろうとしてきたわけですから、その指摘は当然でしょう。

 問題は、どのようにすればガバナンス強化を図ることができるのかという点です。協会は後日詳細を発表するとしているので、現時点では内容が不明です。


 一般的に考えられることとして、複数の社外取締役を送り込んで、社長をはじめとする経営陣が暴走しないよう監督させることでしょう。

 役員人事など特定事項を社外取締役で構成する委員会の専権事項とするといったことも考えられます。

 社外取締役だけでは不安ならば独立した第三者委員会に経営を監視させるといったことも考えられます。


 単純化のため社長一人、株主一人のケースを考えます。

 株主Yは、A社長の監督のためにB・C社外取締役を選任することで、取締役会の2/3はA社長に反対することが可能となるため、A社長の暴走を抑制できます。

 もちろん、それだけで被害者をゼロに出来るということではなく、取締役会が早めに問題を認知し、対処しうる体制とすることでダメージ・コントロールの仕組みを作るということです。

 今回の問題ならば、被害者が訴え出ることができるよう内部通報窓口の整備も必要となるでしょう。

 関係各方面における会社の評判をモニターするといった仕組みも必要かもしれません。


 しかし、これらの方策は上場企業ならば一定の効果があるでしょうが、オーナー企業の場合は意味を成しません。


 オーナー企業であるということは、経営者は同時に支配株主でもあるという点が上場企業とは異なります。


 単純化して社長が株式の100%を保有していると考えます。そうなると先の例ではA社長と株主Yは同一人物ということになります。

 その場合、社外取締役を何人選定しようと株主YすなわちA社長の意向に従う人しか選任しないので、取締役会でA社長が反対されたり不利になったりするような事態は発生しません。

 反対されないことが分かっているので、そもそも取締役会を開催する必要性すら感じられないでしょう。

 社外取締役がいるだけでガバナンス強化と評価されがちですが、オーナー社長が選任している場合はお飾りでしかありません。


 オーナー社長であってもマインドがしっかりしている方であれば、諫言してくれる社外取締役を選任するかもしれません。

 しかし、そのような方が経営者であるならばそもそも暴走する可能性は低いです。

 危険なのは、諫言を聞き入れるつもりがなく、そのような言葉を口にする人間も周り置いておきたくない人ですから、経営者の良心に期待しても意味がありません。


 オーナー企業内部からガバナンス強化を図ることは難しいため、解決しようとすると外部機関による監督という選択肢しかないように思われます。


 協会はどのような方策を示すつもりなのでしょうか。


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